第7話(#19) ライキリ・プロジェクト

ライトノベル

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    コンクリートに囲まれた、学校の教室と似た広さの空間に、少女は立ち尽くしていた。四方のうち正面に壁は無く、屋外に向けて開け放たれている。奥の壁際には新品のタイヤが積み上げられ、無数に置かれた金属製のラックの上には、黒い油にまみれた機械が整然と…

  • 2

    「ミニ四駆選手権」は、予選ラウンド3戦を終えて、決勝に進出する全十チームが決定した。圧勝したチーム、接戦に涙をのんだチーム、それぞれの想いを含んだまま、開催地のオオサカは、日曜日の朝を迎えた。「すーぱーあゆみんミニ四チーム」の五人は、宿泊先…

  • 3

    オオサカ駅からシン・オオサカ駅へは在来線で一駅。すーぱーあゆみんミニ四チームの面々は、理由もわからぬまま、いそいそと列車に乗り込んだ。あゆみは遠くを見つめて何も語ろうとせず、奏は相変わらず、警戒するようにあたりを見渡している。その様子に、ル…

  • 4

    「ごめん、涼川さん!」ホテルのロビーで、奏は深々と頭を下げた。その手にはチェックボックス……スーツケースの一番奥で、昨日着た衣類に埋もれていた……が握られている。もちろん、中にはパープルのタイヤを履いたエアロアバンテが収められている。到着し…

  • 5

    株式会社《無我》。ヤムラ製のクルマの性能を最大限に引き出す、チューンナップパーツを専門に扱うメーカーである。そして国内を中心に、ヤムラ車を使ったレース活動を行う《チーム無我》の運営主体でもある。恩田光一郎はヤムラのレース活動を取り仕切る立場…

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    「そういえば、おじい様」「なんじゃ、もったいつけて。ジジイでええわい」「ん……それじゃ、じっちゃん。ヤムラで、あたしのパパと、一緒にはたらいてたんですか?」「まあな。直接の上司部下だったのは最後の何年かだけだかな。それでもよく覚えておる。」…

  • 7

    光一郎が運転するマケラレーンZ1は、高速道路の注目を一身に浴びながら、すでにナゴヤを通過していた。「パパのハイパーカーの、テストドライバーが、瀬名さんのお父さん……」「嬢ちゃんから瀬名の名を聞いて、ワシも驚いた。じゃが、まあ当然っちゃあ当然…

  • 8

    日が沈み、空がほとんど夜の色に染まったころ、トゥインクル学園中等部学生寮の前に、マケラレーンZ1は到着した。「あゆみちゃん!」「会長」「二人とも、おつかれ様~!」ルナとたまお、たくみが二人を出迎えた。トリッキーなトランクの場所に驚きながら、…

 

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