ワカタカドームの外野に作られたステージに立っている少女。その表情が、バックスクリーン前に建てられた巨大なモニターに映し出される。リラックスしているのか、それともリラックスを装っているのか。どちらにせよ、落ち着いているように見えた。
「あのコ……」
あゆみは右手を上げて指さした。
地区大会を勝ち上がった全二十チームの選手は、野球の内野にあたる場所でチームごとにまとめられている。女子中学生が集団となったらセレモニーを黙って過ごせるわけもなく、各所で話し声や笑い声があがっている。
だがカナガワ地区代表《すーぱーあゆみんミニ四チーム》だけは、静けさに包まれていた。
「あいつがどうしたって?」
たくみがたまらず、声をかける。
「ヤムラで一緒になったの……あのコだ……」
「そういうこと?」
奏は予想外の事態に、予想外の高い声を出してしまう。
「あゆみちゃんが、お父様に会いにいった時に見かけた女の子が、あの、ディフェンディングチャンピオンの瀬名さんってこと?」
「見間違いかも」
「ううん、そんなことない」
ルナとたくみの言葉を遮って、あゆみは続けた。
「見間違えないよ。あの青いキャップ。あたし、風に飛ばされそうになったのを拾ってあげたから」
愛着があるのだろう、少し色あせたブルーのキャップ。
……極めてないんだよ、こいつら。
無造作に放たれた一言が、あゆみの心に深く残っている。その傷跡に、鈍痛が走った。
瀬名アイリーン。あの娘には、何かを感じる。それが何なのかはわからない。共通する何かがあるのか、退け合う何かがあるのか、それすらもわからない。ただ一つ、他の娘からは感じないパワーがある。それだけは、はっきりとわかる。
「涼川さん、大丈夫?」
肩に延ばされた奏の手を振り払って、あゆみは言った。
「これこそ……ブッシュルシュル! おっもしろい!」
