SECTOR-6:AYUMI-2

ここでひとつ、気合をいれないと!
それがあたし、《すーぱーあゆみん》の果たすべき仕事……だけど……。

みんながそれぞれに、落ち着きをなくしているのがよくわかる。無理もない、私自身、グローブの内側にたっぷりと汗をためているんだから。ルナが用意してくれたユニフォームは、そんなあたしの震えをおさえ、程よくクールダウンしてくれるみたいだ。
十五分前を告げるサイレンが鳴った。拳を握りしめると、グローブの生地がきしんで音を立てた。

「みんな!」

あたしは気持ちを決めて声をあげた。立ち上がり、四人を見る。女帝……赤井さんの言葉、正確には藤沢さんから聞いたのだから本当かもわからないけど、それに惑わされている会長。突然現れた、川崎さんという自称ライバルの登場に動揺している? けどニコニコした顔からは読み取れないルナ。この前もそうだったが本番になると弱いたくみと、目をつぶって瞑想しているたまお。よくもまあ、ここまでバリエーションのあるメンバーが揃ったもんだと思う。

「もうすぐ、予選がはじまります」

一呼吸いれる。

「ここまでこれただけでも、あたしは本当に嬉しい。でも、あたしは欲張りだし、でしゃばりだし、だから、欲しくなっちゃう」
「……何を」

ゆっくりと目を開いた、たまおが言った。あたしのくちもとが自然とゆるむ。この感覚だ。これがあるから、レースは、ミニ四駆はあたしをとらえて離さない。

「一番っていう、ポジション」

私は、言ってしまった! また言ってしまった! と、達成感と後悔の両方がこみあがるのを感じてましたが、四人はなんだかおかしな反応。

「何かと思ったら」
「そんな事、もう存じていますよ」
「ボクたちだってさ、」
「同じですよ、あゆみ」

みんなが立った。バラバラに思えたけど、奥底ではみんな準備ができていたんだ。自分が何とかしなきゃ、と思ってたあたしが一番、自分を失ってたみたい。

「そうだね、ごめんね。余計なこと言って」
「余計なものですか」

会長が歩みでて、あたしの両肩をつかんだ。力は込められてないけど、てのひらから伝わってくるものがある。

「何度でも、その気持ちを強くもっていきましょう、あゆみ。あなたが手をとってくれなければ、みんなここまでこれなかったんだから。不安なのはみんな同じ。だから、今度はわたしが、わたしたちがあゆみを支えるような走りをしたい」
「会長……。」
「そろそろ出走順を登録するんでしょ?」
「ええ、じゃあ、伝えるね」

顔をあげた。
みんなの強い視線の向こうに、目指すべき場所、メインステージ、表彰台、そのてっぺんが見えた……!