SECTOR-1:TAKUMI-1

エアロサンダーショットにアクシデント発生!
どうしてこういう時になるとボクって何にもできないんだよっ!

「どうしたっていうのさ!」

スタートから一時間過ぎ、みんなで交代で休憩をとることになったんだけど、ボクの番が終わったと思ったらピットが騒がしい。慌てて戻ると、右のリヤタイヤを交換し終わったところだった。

「シャフトは!」
「問題ないわ!」
「よっし、ピットアウト!」

サイレンとともに、《エアロサンダーショット・フルカウラーV》がピットを出てコースへと戻っていく。

「たま姉、何があったんだ?!」
「……小田原さんのチームのマシンを、《ショウナンナンバーズ》のトップフォースEvo.がかわそうとした」
「小田原さん、もう周回遅れなのか……。」
「そうしたら二台とも同じ方向に避けてしまって接触。」
「うわあ……。」
「で、ベアホークがスピンして止まったところにサンダーショットが」
「そうなんだ」

観客席を見ると、みんなの目線はボクらのマシンじゃなくて《ショウナンナンバーズ》のピットに向いている。

「あゆみちゃんがとりつけたカウルがタイヤを守ってくれたから、そんなに大きなダメージじゃないけど」
「ああ……。」

トップフォースEvo.はバンパーが大きくねじれてしまっている。VSシャーシの弱点、バンパーの強度不足が原因だろうな……。
もうねじれた部分は諦め、追加でプレートを取り付けようとしてる。これは時間のかかる作業になりそうだ。

「耐久レースって、ノートラブルじゃすまないからね」

ピットウォールから会長が下りてきた。

「涼川さんを休憩させたいんだけど、誰か代わりに入ってくれない?」
「じゃあ、ボクがいくよ」

考える間もなく手を挙げた。また、大事なところで何もできなかったんだから、こういうところで取り返さなきゃ。正直、ちょっと焦ってた。

「じゃあ、いきましょ」

ピットウォールのあゆみは、顔の前で手を組んでサンダーショットの動きを見つめていた。

「涼川さん、いったん休憩してきたら」
「会長……ありがとうございます」
「ボクに任せといてよ」
「ふふ……変なことしないでよ」
「あったり前だろ!」

意外にあっさりと、あゆみは席を立っていった。

「もう少しゴネるかと思ったけど」
「まあいいわ。それにしても先頭の《レジーナ・レーシング》のナイトレージは落ちてこないわね」
「一時間ちょい経って、ようやく一周差。それでもかなりプッシュしてるようですね……。」
「今後どうなるか、ね」

一方で、スタートから二位を走り続けている《スクーデリア・ミッレ・ミリア》、つまりエンプレスのフレイムアスチュートはたんたんと走り続けてる。

「うーん……。」

ピットウォールの席に座ってはじめて、たくさんの情報を見て、それをコントロールするのは難しいと、ボクは早くも思い始めていた……。