SECTOR-6:HIDEMI-1

これで私の役目は終わったわ。「すーぱーあゆみん」、この決着はいずれつけましょう。

体育館中を、トゥインクル学園生徒の大歓声が包んでいた。

私は《バーサス》のインカムをはずして、勝者の横顔を見た。信じられない、というよりは不満、といった方がいいだろうか。奏からの話では、これでミニ四駆部の設立が認められた、というはずなのに、何だろう。

私は、その理由を確かめたくて、そして、トゥインクル学園ミニ四駆部の設立に、おめでとう、と言いたくて涼川さんに近づいた。

「どうしてですか」

私が差し出した手を見つめて、涼川さんは言った。

「何が?」
「何で最後、ペースダウンしたんですか」
「え?」

しまった、露骨だったか? という心の声が聞こえてしまっただろうか。やはりこの娘は……。私は嬉しくなった。

「バッテリーが、限界だったのよ。あなたもそうだったでしょ?」
「いや、違います。バッテリーがなくなったのなら、スピードの落ち具合はもっと緩やかなはずです。でも、あなたのマシンは第四ターンを抜けたところで、急に遅くなった」
「ニッケル水素バッテリーのネオチャンプなら、よくあることじゃない?」
「それにしてはおかしい!」

かかった唾を、私はぬぐった。

「だとしたら、どうする?」
「え?」
「私がもし、わざとペースダウンしたとしたら、どうするの? あなたはミニ四駆部設立、そして『選手権』へ出場するためのストーリー、その最初のステップをクリアしたんでしょ?」
「だからって、だからってそんな情けをかけられるなんて!」
「その前に、まずは、みんなの方を向いてあげたら?」

ステージ下、詰め掛けたギャラリーから「あゆみ」コールが起こっている。みな、新たな学園のヒロインの声を聞きたがっているのだ。

「あ……」
「さ、トゥインクル学園ミニ四駆部キャプテン、涼川あゆみさん」

私は彼女の背中を叩いた。

「次は、最後まで堂々と勝負してください!」
「ええ。楽しみよ」

ゆっくりとステージ中央へ歩いていく姿を見届けて、私はステージの袖に引っ込んだ。

「お疲れ様」
「これでよかった? もう少し上手にした方がよかったかしら?」
「ううん、その辺は秀美のやり方があるし」
「そう」

袖に置いてあったバッグにマシンをしまう。ステージ上に残った《バーサス》を片付けようと思ったが、どうやら涼川さんへのインタビューが始まるみたいだ。

「また呼んでよ。いつでも受けて立つ」
「うん」
「あなたの挑戦もね、奏」