Sector-2 :AYUMI-1

駅から伸びる、人の列!
これだけでも燃えるのがミニ四チューナー!

「着いたーっ!」
「話には聞いてましたが、すごい人ですね……」

りんかい線の国際展示場駅を降りると、正面に逆三角形のオブジェ。
そこへ向かって延びる列、みんな片手にポータブルピットを下げている。
ジャパンカップ東京大会③。
『バーサス』でのレースとは別に、リアルなレースイベントは毎週のように開かれている。その中でももっとも大きくて歴史もあるのが日本選手権、ジャパンカップだ。25年前から始まったジャパンカップは、全国約20ヶ所の会場を巡り地区代表を決定、最後は真の日本一を決めるというとてつもないキャラバンである。

「ちょっと緊張するかも……」
「大丈夫ですよ~。痛いのは一瞬ですから」
「緊張するからやめてよ、もう!」

ミニ四駆部に参加して一ヶ月、会長もずいぶん話してくれるようになった。
エアロアバンテも作ってはテスト、壊しては修理を繰り返して、コースをだいぶ走れるようになってきた。
それにひきかえ、あたしの方は会長のマシン作りに気をとられて全然チューンできず……。まあ、今回は「トゥインクル学園ミニ四駆部」として初めての校外活動だから、それだけでもあたしは大満足だ。それよりも……

「会長の私服って、超レア~」
「ちょ、それ何回言われても気持ち悪いからやめて!」
「いやいやいや~。」

デニムのスカートからのぞく、黒タイツ!
制服の時も変わらないその姿には、こだわりがあるんだろう。あたしの方は重ね着したTシャツとデニムのパンツ、かわいさも何もあったもんじゃない。

「ほーら、ふざけてると遅くなる」
「むう」

あたしたちの脇を、大人の……なんというかおじさん達が小走りにすり抜けていく。改札から続く人の波は途切れることなく押し寄せてくる。
会長の背中を追って、あたしも歩き始めた。
「女帝(エンプレス)……赤井さんはもう来てるんですかね」
「秀美ならとっくじゃない?」
「そうですよね」

会場で会おうと言ってくれたのは、女帝の方からだった。ただ待ち合わせはせずに
、会場で会えたら会おうという、という程度の距離感だ。
そんな考えを、頭を振って吹き飛ばす。目線の先には、さっき見た逆三角。でも近づくほどに、じわじわ大きくなっていく。レースの会場はその向こうにある駐車場だ。
スマホで道を調べなくても、行き方はわかる。何千人ものミニ四チューナーが、一本の線になっている。その線をたどっていけばいいのだ。

「いよいよ!」

興奮をおさえられず、思わず声をあげた。