Sector-6 :AYUMI-3

残り3周、
とんでもないバトルが目の前で始まった!

さあ、エアロアバンテがフェスタジョーヌのリヤに入った。
ストレート、ホームストレートを駆け抜けていく。ここはルナがおさえこむ。

フェスタジョーヌはエアロアバンテの行く先をふさぎ、狭いコースを巧みに利用している。『バーサス』上でバトル状態になるということは、両者のラップタイムが接近している証拠……。

トンネルの中の高速コーナーからシケイン、ここが問題だ。ここも抜きどころ。しかし順位は変わらない。

もうルナも、さっき教えた「オーバーテイク」の手順を使っているのだろう。
しかしエアロアバンテが後ろに来ている!これは外からいく!もう会長はどっからでも行ける!

「会長! どうしました!? 大丈夫ですか?」
「あーっ! やってるわよ!」
「ルナちゃん?」
「……」

ルナから返事はない。完全に「スイッチが入った」感じなんだろうか。

あと2周。コース脇では「後ろからペースの速いマシンが来ている」ことを示すブルーフラッグが掲示された。しかしあと2周、ルナは譲らないつもりだろうか?

さあ、もう一度トンネル。これが勝負。
シケインが待っているが、ルナが押さえた。フェスタジョーヌがスライドしながら押さえていく。すごいレース、すごいバトルだ。
エアロアバンテが右に左に懸命にプレッシャーをかけるけど、抜けない!

これからファイナルラップ。
ルナにとって初めてのミニ四駆、そして『バーサス』体験が信じられないような、すごいレースになった。

本当に最後のトンネル内の高速コーナー、そしてシケイン。抜かせないルナ。恩田会長、先輩の威厳の灯火が、向こうでかすかに揺れて今にも消えそう……。

このレース、ルナの入部記念というよりも、トゥインクル学園ミニ四駆部にとっては大きな、大きな意味がある。これから最終セクション。

どんなにしても抜けない。ここはセルジナ公国・ストリートコース。絶対に抜けない!
最後の直線、後ろから会長が仕掛けるがどうか!

届かない!

ルナ逃げ切った! 猪俣ルナ、押さえきった!最後の最後、ギリギリいっぱいのところまでフェスタジョーヌ、MAシャーシは我慢した!

と、大きな音が食堂に響く。

「ルナちゃん!」
「猪俣さん!」

フェスタジョーヌがコース脇に止まるのと同時に、きゃしゃなルナの身体が、フローリングの床の上に崩れ落ちた……。