Sector-1:RUNA-1

秋晴れの空のもと……。
私たちの挑戦はここから始まる! はずが?

今日はトゥインクル学園の文化祭です。

この学校の文化祭は中等部と高等部が合同で行うので、準備の間から、普段は近づかない高等部の先輩方やその教室に近づくことが多くなります。もちろん、中等部の中でもクラス関係なく、色んな部活の人が校内に溢れかえるわけです。
私には、ちょっとゆううつな期間でした。クラスのみんなからも、1枚ガラスをはさんだようなお付き合いしかしてもらえないのですから、ウワサしか知らない他のクラスの子、それに高等部の先輩からもどんな風に見られるのか心配で心配で、とにかくこの期間を、そして文化祭の一日を静かにやり過ごすことに集中していました。
でも、今年はちがいます。涼川さんに誘ってもらったミニ四駆部。その仲間である涼川さん、恩田会長が私を広いフィールドに誘い出してくれました。そう、この青く広がる秋空のように広いフィールドに……。

「はぁ……」

なぜかため息が出ました。例えではなく、今頭の上には青い空が。そう、私は、いや私たちミニ四駆部は屋上にいるのです。

「恐れ入りますが、会長」
「なんです?」
「あの、本当に高等部の屋上しか使わせてもらえなかったのでしょうか」
「ごめんなさい、猪俣さん。本当に本当なのよ。新しい部活が使える場所なんて、余ってなんかないから」
「もし、予算の問題というのなら、協力……」
「わー、わーわーわー!」

ブルーシートの上に広げられたコースを飛び越えて、部長である涼川さんが私たちの間に滑り込んできました。

「あの、部活ですから。私物で活動するようなことはしません」
「そういうものなのでしょうか……」
「そういうものです」
ずいっ、と顔を近付けられてしまうと、もう用意してるものがあるとはさすがに言い出しにくく、作り笑いでごまかしてしまいました。

「ま、こういうところから始めた方が、この先うまくいきそうな気がするんだ!」

涼川さんはそう言って腕を組みました。この根拠のない自信がどこからやってくるのか。私にとっては不思議で、同時に魅力的なところでも、あるのです。

「でも、まあ見学者歓迎とは貼り紙してるけど、実際ここまで来てくれるのはよっぽどの物好きか、このメンバーに恨みでもある人じゃ」
「たのもーう! たのもうたのもう!」

涼川さんの言葉を遮って、階段から通じる扉が開いた。私は《彼ら》を恐れて身を固くしましたが、現れたのはトゥインクル学園の制服でした。

「やあやぁ!涼川あゆみ!」

現れたのはショートカットの元気な娘。涼川さんを指差した、その背後から影が立ち上がったかのように、もう一人の娘が現れたのです。文字通りそっくりの顔で。

「……勝負」

その様子を見て、会長がキャンピングチェアから滑り落ちました。

「ぶ、分身したーっ!」

そんなはずはないと思いますが……。