Secor-2:AYUMI-1

昔なじみの双子だけど、まあなんだかケンカ腰ですな。いいよ、受けて立とう!

「あ、早乙女ズきてくれたんだ」
「ボクらをまとめて呼ぶな!」
「……無粋」

早乙女ズ。
ふたりは双子。だけどそれぞれから受ける感じはだいぶちがう。
妹のたくみは元気。自分のことをボクって呼ぶのがちょっとイタいけど、あたしに似たところもある。一方で姉のたまおは、無口で何を考えてるかわからない。たまにしゃべっても短いことばしか出てこないので絡みづらいんだよな。

「ちょっと、あなたたち」

立ち直った会長が言った。

「一年生でしょ? 先輩に向かっての口の聞き方、それでいいの?」
「ああ、会長気にしないで。あたしと早乙女ズは付き合い長いから、これでいいの」
「しかしねぇ」
「……閑話休題」
「そうだよ! ボクらは用があってきたんだ! もちろん会長さんにもね!」

たくみが、抱えていた100円ショップのツールボックスからなにかを取り出して、あたしに向けて突き出した。人型のロボット、のプラモ。表面はつや消しで、立体的な塗装がされている。背面から伸びるパーツは人型のシルエットを崩し、追加の武装があちこちに取り付けられていた。

「涼川あゆみ、まだミニ四駆なんかやってるの?」

挑戦的な目。でもまっすぐだから、悪い気はそんなにしない。いつから見てきたのか思い出せないくらいの、おなじみの光。

「悪い?」
「悪いに決まってるだろ! そういうのは小学生にまかせとけばいいんだよ!」
「年相応」

たまおもどこからか、自分のプラモを取り出した。武骨な、平べったい、土色のカタマリ。まっすぐに伸びた砲塔が強い力を感じさせる、10(ヒトマル)式戦車。タミヤのホームページで何度か見たことがある。

「ふたりともよくできてるじゃない。でも、それとミニ四駆となにか関係あるの?」
「あるさ! ミニ四駆はプラモの長い道のりのほんの始まり。いつまでもとどまってちゃだめなんだよ」
「……プラモ部」
「たま姉の言うとおりさ! ミニ四駆部なんて小さいこと言わずに、プラモ部にしようよ、あゆみ」
「あなたたちなに言ってるの!」

会長があたしたちの間に立つ。

「会長から言われたことですよ。プラモ部を新たに作るのは認められない。ミニ四駆部に合流しなさいって」
「あ、あの申請書は、そうか、あなたたち!」
「申請書?」

あたしは思わず繰り返した。あれをめぐってはあたしも会長とたたかった経験があるから、ヒトゴトとは思えない。

「なんとなく、早乙女ズの言いたいことがわかってきたわ」
「だから、その言い方はやめてって」
「つまり、私達3人がまとめてミニ四駆部から、あなたたちのいう《プラモ部》に移ればいいわけですか?」

ルナも立ち上がった。

「正解」
「でもそんな事、生徒会長の私が断ります。二人がミニ四駆部に入るっていうのならわかるけど」
「へっ、そんな事は折り込み済みですよ。もちろん何にも条件なし、なんていいません」
「条件ね……」

だいたい話の流れが見えた。早乙女ズは、手にしたプラモをしまうと、また別のどこかから、今度はミニ四駆を取り出した。

「……コペン、RMZ」
「ボクはコペンXMZ! この2台と勝負してよ。もし、あゆみが負けたら」
「ミニ四駆部は《プラモ部》になるわけね」
「そのとおり!」
「ちょっと、涼川さんがそんな条件をうけると思っていますの?」

ルナが両手を拡げて私の前に立つ。ありがたいけど、腹は決まってる。静かにルナの肩に手をおいて、あたしは言った。

「いいよ。やろうよ。ただちょっと時間をくれない? 一時間後に、講堂で各部のアピールタイムがあるから、そのときにさ。」