SECTOR-4:TAMAO-1

なるべくノイズは入れたくないけど、
これだけひとが集まってればしょうがない。まずは集中しかない。

主催者の代表からのアイサツに続いて、地区予選の進め方について説明があった。

きょうの予選にエントリーしているのは、全部で三十八校。これは東京に次ぐ数字だそうだ。この中で決勝に進めるのは二十校。ほぼ半分が予選落ちとなるけど、多いというか少ないというか。
予選は《チームタイムトライアル》。合宿であゆみが説明した通り、メンバー全員のタイムの合計で競われる。ただアタイらは五人でエントリーしてるので、「一番遅かったマシンのタイム」と「一番速かったマシンのタイム」はカウントされず、真ん中の三人のタイムを合計する。ひとりはコースアウトするくらい飛ばしていってもいい、と解釈すればいいのか。

「それでは、一時間後に予選を開始しますので、各チームはピットにて準備をおこなってください」

アナウンスと同時に、女子中学生の話し声が一斉に立ち上がる。戸惑い、焦り、驚き、決意……、いろんな感情があたりに満ちている。その渦のなかで、アタイは平常心を保てるんだろうか。

「よし、すーぱーあゆみんミニ四チーム、いくよ!」
「おーっ!」

あゆみの声を聞いた瞬間、不安に飲み込まれかけてたアタイに気づく。だめだ、あぶないところだった。

「おう」

アタイも、合わせて声をあげた。猪俣センパイがいて、会長がいて、たまおももちろんいる。

「たま姉、気合はいってるね!」
「……うん」
「そうこなくっちゃ!」

たまおが私の肩を抱えて声をあげた。ああ、こいつもやっぱり不安なんだな。わずかに震える手のひらに、アタイの手を重ねた。

「たまお、行こう」

言って、アタイは歩き始めた。

細長い会場を、サーキットのホームストレートに見立てて、各チームの「ピット」が設けられてる。要するにパーティションで仕切られた場所なんだけど、ひとつひとつに一台ずつ《バーサス》の端末が置かれている。三十八チーム分の走行データが、会場に立てられたサーバーで集計され、正面のスクリーンとピットのモニター、もちろん全国の《バーサス》ネットワークからもアクセスできるようになっている。と、さっき説明があった。
ランダムに割り当てられたピット。《すーぱーあゆみんミニ四チーム》の場所は向かって左、鈴鹿サーキットに例えるなら出口に近い方から七番目だった。

「涼川さん~! おとなりですや~ん!」
「小田原さん!」
「すごい、ユニフォームつくったんですの? かわいい~!」
「そう? ありがと」

温泉合宿で知り合った、強羅中学校「チーム・メリーゴーランド」のキャプテン、小田原ゆのさん。
見てて違和感がないのは、あのときと同じ、女将さんスタイルでキメてるからだろう。たすき掛けがなんだかかっこいい。

「がんばって予選通過しましょうね!」
「うん」

そう。友達になれたとは言え、レースに参加する以上はライバル。むずかしいところだ。緊張と高揚、ふたつの気持ちがひしめきあう中で、準備は進んでいく。