SECTOR-3:RUNA-1

どうしても目の前のレースに集中できない……。
川崎さん……もう少しでいつ会ったのか思い出せそうなんです……。

「どなたでしたっけ~」

2番目にアタックしたマシンの中で、一番速かったのは《レジーナ・レーシング》の川崎志乃ぶさん。確かさっき、会場に入ったときに声をかけられたひとです。
川崎さんは私のことを知っているとおっしゃっていましたが、私は本当に思い出せず、記憶をたどろうとしましたが、川崎さんのようなゴシックロリータが好みの方は出てこず。ま、それはさておいて目の前のレースに集中しなければ……。

「センパイ、大丈夫ですか」
「も~、ボクたちにだまってこんなコスチューム準備してっからだよ」
「え、そうね、大丈夫」

たまおさんとたくみさんに声をかけられて、私は我にかえりました。

「フェスタジョーヌは、RMZよりもダウンフォースが出てるから」

ダウンフォース。下向きに発生する空気の力。ボディにつけられたウイングや、シャーシ・ボディを流れる気流からも発生する、《バーサス》ならではの力、とあゆみに聞きました。フェスタジョーヌはリヤに大型のウイングを装備しているので、特に後ろ側を中心に大きな力がうまれ、ストレートでの加速、コーナリングでの踏ん張りに影響があるのです。

「気を付けて」

二人に見送られて、ゴールドの車体がコースインしていきます。そういえば小学生のとき、早乙女ズのように親切にしてくれた、体は小さいけど気がきく娘がいたような……名前は……し……あー何て言ったっけ……。

「ルナ!」

あゆみの声に、からだが跳び跳ねた。
フェフタジョーヌは既に最終コーナーにさしかかっていた。

「ごめん! いっくよーフェスタジョーヌ!」
《COPY》

予選アタックに備えたモードに切り替わり、ヘッドライトに灯がともった。

……ルナちゃん、暗いと帰るの怖い……。
……大丈夫だよ~? あ、あれ、後ろにいた黒塗りのクルマがライトつけてくれたよ~?
……ええ~!?
……これで暗くないって、あ、しーちゃん!
……きゃああー!
……よかった……。しーちゃん暗いの怖くなくなったんだね! あなたたち、いつもありがと!

そう、あの小学校で会った娘、しーちゃんがしのぶ、川崎志乃ぶちゃんだったんだ! こんなところでまた会えるなんて……。

「そっか、負けないよー!」

低くワイドな車体を活かして、タイヤがスライドしないよう、でも取り残されないよう、バランスをとりながら第一コーナー、第二コーナーからS字コーナー、そしてヘアピン、確実に路面をとらえて進む。長いストレートから、たまおがコースアウトした高速コーナー。あのクラッシュで限界のペースはわかりました。縁石いっぱいまで使って、最終コーナー。派手なアクションはなかったけど、確実に37秒台のタイムを刻めました!

Qualifying session
Afterr 3rd stint

P1 #1 Scuderia Mille Miglia 4.47.070 (1.35.905)

P– #30 Super Ayuming Mini4 Team —  (1.37.756)