SECTOR-4:KANADE-1

秀美が見ている。やっとたどり着いたこのフィールド。
私にできるのは、ここまで来たら祈るだけ……。

緊張してるのがはっきりとわかる。喉が乾いて仕方がないけど、今何か飲んだら何が起こるかわからない。

ルナが第三走者の中でトップ5に入るラップを出してくれたお陰で、順位は盛り返した。もちろんコースアウトでタイムなしになる危険性はあるが、あゆみがそんなミスをおかすとは思えない。それに確実に秀美に迫るラップになるだろうから、チーム内での順位はもちろん一位。そうなると、これから始まる私のアタックで順位が左右されることになる。

「会長、出番だよ」

あゆみの声も、どこか遠くからしか聞こえない。つかんだエアロアバンテも手のひらに馴染まず、慌てて落としそうになる。

「もう、生徒会長なんだからこのぐらい、いつものことでしょ?」
「んー、いやいやいや、そんなことないわ。全然違う」
「情けないですな~。《女帝》も見てますよ会長のこと」
「そんなはず……!」

各チームのクルーが行き交うピットロード、下り坂になったストレートの始まりに、深紅の影が見えた。マラネロ女学院のシンボルカラー、血の色ともよばれる深い赤。ポロシャツにタイトスカート、シンプルなユニフォームをまとった秀美がこちらを見ていた。
メガネをかけても1.0に届かない私の目。ただ《バーサス》の作り出した視界は、はっきりと《女帝》を浮かび上がらせた。

ようやく勝負できるっていうのに、しっかりなさい。

そう言ったように感じられた、一瞬の出来事。秀美の姿は人混みの中に紛れて見えなくなった。
そうだ、私はようやくここまできたんだ。秀美と同じ戦いの舞台に。

「会長、見えました?」
「……ええ」
「負けられませんよ」
「負けられないわね」

鼓動はおさまり、脚にも力が戻ってきた。こぶしに力を込めると、エアロアバンテの流れるフォルムを感じることができた。

『4番目にアタックするマシンをコースインさせてください』

ルナが選んだのと同じ、固めのタイヤ。プラス、立ち上がりを重視した低めのギヤとトルク重視のモーター。コース前半のテクニカル区間でタイムを稼ぐ。後半の最高速は劣っても、トータルでは速いはず。
事実、アタックに入っての区間タイムは同時に走っている中では最速! 秀美からも0.2秒しか負けていない。ヘアピンから折り返してのバックストレート。差は広がったけどまだ0.4秒。高速コーナーを抜けて、シケインの進入。強力なブレーキで、タイヤから白い煙が上がる。エアロアバンテはもどかしげに向きを変えてホームストレートへ入っていく。

「出た!」

Qualifying session
Afterr 4th stint

P1 #1 Scuderia Mille Miglia4.47.037 (1.35.872)

P12 #30 Super Ayuming Mini4 Team 4.52.854 (1.35.942)