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午前七時ちょうどにトーキョー駅を出発した新幹線《あいな二〇三号》は、東海道をひたすら西へ向かっていた。
ミニ四駆選手権全国大会、第二戦の舞台はナゴヤ。会場は開幕戦、フクオカ《ワカタカドーム》と同じく、ドーム球場《オレリュードーム》。あゆみ達は三人掛けのシートを対面させ、最高速度二百五十キロ以上で進む車体に揺られていた。

「うおっ、今のシズオカ? ミニ四駆のふるさとだろ? あー、一回行ってみたいんだけどなー」
「涼川さん、ちょっと声が大きすぎ」
「えー? だってあっちの子供の方が大きいですよ?」
「あなたは子供と張り合ってどうするの!」
「そう言われると……でも、あたしって大人? 子供? 会長は大人ですか? それとも子供?」
「何を突然聞くのよ! そんなの、わかんないわよ」
「まあまあ、二人ともレースの前に、あんまりお互い刺激するようなことはやめてください! 今日の午後なんですよ!」
「ん、あ、まあ、そうだな」
「そうね、ごめんなさい、猪俣さん」
「いいえ……」

予選ラウンドは四チームによる総当たり戦。初戦を落とした《すーぱーあゆみんミニ四チーム》にとって、第二戦を落としてしまうと、ほぼ後がなくなる。数字上、二敗しても決勝進出の可能性がゼロになるわけではないが、他のチームの動向に左右されるため希望は持てない。全力で勝ちにいく以外に、先へ進む方法はない。それが事前のミーティングで確認した結論だった。

「それにしても」

気まずくなってしまった責任を感じて、ルナが声をかける。

「たまおちゃんとたくみちゃん、新幹線が動いた途端に寝ちゃいましたね」
「そう言われれば、確かに」

窓際の席に向かい合って、二人は静かに目を閉じていた。膝の上に載せたリュックを抱え込むようにして、深く眠っている。
リュックの中にあるのは、二台のニューマシン。メトロポリタンハイウェイを舞台に行われたバトルから今日まで、一日しか経っていない。その間、セッティングを確立させるためのテスト走行、改造、そしてまたテスト走行と、二人は自身の《デクロス・ワン》を理解するために多くの時間を費やしてきた。その結果がどれほどのものなのか、あゆみ達は実際の走りをまだ見ていない。

「私たちも、今できる最大限を、悔いのないようにぶつけるだけ。それ以外に、道をひらく方法なんてないからね」

奏の言葉に、二人は深くうなずいた。