Sector-6 :KANADE-2

一つの道がふさがれたなら、
次の道を探しにいく。それが本能みたいね。あの娘たちの。

「お、お疲れさまです」
「はい」
「ん」

ファストフード店の奥、私の乾杯に残りの二人はついてこない。
まあ無理もない。結局、秀美が訴え出てすぐに大会の中止が決定した。オープンクラスの一次予選は最後まで終わらず、何人かの執念深いオトナが大会本部に駆け込んだのうだったが、ほとんどの選手はそそくさと会場からいなくなった。
涼川さんも奏も、文字どおり電池が切れたマシンのような状態だったけど、引きずるようにしてここまで運んできた。
それぞれにドリンクと、テーブルの真ん中にフライドポテトの山。三つの手が代わるがわる伸びて山を崩してゆく。ざわつく店の中、この一角だけが静かだった。

「天気はどうしようもないものね。こういうとき『バーサス』なら」
「それな」
「それよ」

二人が急に、スマホを手にとって何かを調べ始めた。右手で画面を操作しつつ、左手はポテトを口に運んでいく。一流のチューナーは左右の手で別々の作業をこなすと何かで読んだけど、正にその光景が目の前に二つあった。

「ありました!」
「いくわよ!」
「え、なになに、待ってよ!」

自分のカップだけ持って、二人とも立つ。残されたトレーは私が運ぶことになる。そんなつもりはないのに、だ。

「会長、ごめんなさい!」
「下の階、トイショップにいるから」
「え、あ、ちょ、おま」

駆け出していく背中は、さっきまでの弱々しいそれとは違う。何を見つけたのかはわからないが、元気になったのはよかった。
私はトレーを片付けてから、エスカレーターを下った。秀美が言っていたトイショップの店頭に人だかりができている。
子供向けのトレーディングカードゲームに並んで、それは置かれていた。軽金属の筐体が2つ、その間に液晶のモニター。映し出されているのは、ついさっき見た、ミニ四駆サーキット。

「懲りないわね、秀美も」

バーチャル空間のスタート位置に、真っ赤なマシンがセットされた。人垣の向こうに、ニヤリと笑う横顔が見えた。