SECTOR-4:AYUMI-2

《ミニ四区選手権》、そのレース形式について説明するよ!  みんなしっかり確認するように!

お手伝いをしてる娘、小田原ゆのちゃん。チーム・メリーゴーランドは、もう「選手権」にも申し込んだとのことなので、いろいろ聞いてしまった。
その、ゆのちゃんが運んでくれたゴハンを美味しくいただいて、あたしたちは何だかリラックスモードに入っていた。
「はっ!」
何のために、ここまで来たのか。五人でダラダラと寝転がってスマホをいじったりテレビを見るためじゃないはず!
「部員全員注目!」
あたしはそう叫んで、バッと立ち上がった。浴衣の会長とたまお、Tシャツ・短パンのたくみ、そしてネグリジェ? なにか優雅なモノをまとったルナ、それぞれあたしに向き直る。たまおがすかさずテレビを消す。
「なあに?」
ルナが言う。
「改めて、今度の《ミニ四駆選手権 地区予選大会》について確認しておきたいの」
バッグからクリアファイルを取り出し、布団の上に広げた。一枚目の真ん中に大会の名前が大きく印刷されている。
「そもそも《ミニ四駆選手権》とは? いまから27年前、サーキットでミニ四駆を走らせるってのが出来上がるのと同時に始まったイベント。そこはいいわよね」
ちら、とたまおを見ると、小さくひとつ頷いた。
「今の《バーサス》のもとになった、バーチャル世界でミニ四駆を走らせる装置を使っての大会。第一回の決勝は三分割ボディのマシンがフロントモーターのマシンを破って勝ったみたい。それから全国を巡業したり世界戦を開催したり色々あったみたいだけど、今は学校対抗になって、各地で予選大会を開いて勝ち上がったチームを集めて全国大会を開催することになってる」
「そこまでは知ってるよ」
たくみはあぐらをかく。
「そうね。で、神奈川エリアの予選が二週間後、土・日の2日開催。初日はエントリー全チームでの、《チームタイムトライアル》。日曜日の決勝は、予選での上位チームによる《8時間耐久レース》と発表されてる」
「《チームタイムトライアル》ってどういうこと?」
会長が身を乗り出す。浴衣がセクシー……なはずだけどそんな気配ぜんぜんない。ジャージのあたしが言えた立場じゃないけど。
「えー、少なくとも3台、最大で5台で1周のタイムを計るそうです。3台のラップタイムを合計したものをチームのタイムとして出して、その上位10チームが決勝進出で」
「待って? じゃあ私たちみたいな5人チームはどうなるの?」
ルナの質問に、あたしは書類を斜め読みする。
「あった! 4台の場合は、ベストの1台のタイムはカット。5台の場合は、ベストの1台と最下位の1台をカットする、って」
「はーん」
「……納得」
「たま姉、どういうこと?」
「エース1台に集中させても、無意味」
「あー、なるほど!」
「たまおの言うとおり。このルールだと、とにかく全員がベストのタイムを出さないといけない。逆に一人はコースアウトギリギリの攻めたセッティングにしてもどうにかなる」
「そっか、おもしろそう」
「うーん、難しい」
「やるっきゃない!」
「戦略が重要」
「よーし、じゃあ作戦会議! っと、あとひとつ」
ここに来る前に気にしていたもの。書類の束の中、ポストイットを貼ったものがある。
「学校名とは別に、チーム名をつけららるんだって。さっき小田原さんに聞いたら、ほとんどの学校はつけてるらしい 」
「確かに、秀美のマラネロ女学院は、たしか《スクーデリア・ミッレ・ミリア》って長い名前だったわ」
「……どうする?」