SECTOR-1:TAMAO-1

予選が終わったと思ったらすぐにランチ。
午後には決勝レースがあるからね……。腹が減っては戦はできぬ。

「おおーっ!」
「すごいわね……」

予選が終わって一息つく間もなく、主催者からランチをふるまうってことで、決勝に進んだ20チームは順次、会場となりのホテルに案内された。
地下の宴会場のひとつに入ると、もう準備は整っていた。和・洋・中、それだけじゃない、色々な分野の料理が並べられた、ランチブッフェ。
アタイは、別に、そんなに食べることにこだわりはないからいいんだけど、たくみとあゆみったら、もう何というか。

「やきそば! やきそばー! やきそばが食べ放題~!」
「にくにくにく! とりにく!」
「もー、あなたたちはそれでも女子ですか!」

会長が声をあげるけど、それ以上のテンションで二人は走っていってしまう。

「たくみ!」

アタイの声も聞こえていないようで、どうやらお皿とお箸をさがしに行ったようだ。既に案内されていたマラネロ女学院のメンバー……みんな赤一色のユニフォーム、それにいま入ってきた三位の西湘中学のメンバー……こっちは白いシャツがまぶしい制服だ……みんなが二人に注目してる。なんだかもう。

「まあ、お腹すいてるんでしょ。私たちも召し上がりましょ」
「あ……はい」

ルナ先輩が、軽く肩をたたく。その手の感触はなんだか温かくて、妙に安心できる気がした。
そうしている間にも次々と予選通過したチームが宴会場に入ってきて、いつの間にか女子中学生の歓声があちこちから響く、アツい空間になっていた。

「もー、行っちゃったものはしょうがないから、私たちはなるべく離れないようにしましょう」

話す会長の口元に耳を近づける。全二〇チーム、約百人がいるなかで、普通に顔を向き合わせていたのではまったく聞こえない。そんな状態で、

「おめでとうございます!」

と、急に声をかけられて、思わず身体をかたくしてしまう。

「あんた……小田原さん」
「あー、よかったー。覚えててくれたんですね」
「ええ、まあ」
「わたしたちも何とか決勝に残れたんで、よかったです~」
「うん」

不意に手を握られると、ますます反応に困る。参ったなあ……。

「ぜーったいに、最後まで走りきりましょうね!」
「うん」
「じゃあ! 涼川さん探してきます!」

小田原さんの、たすき掛けした和服の背中はすぐに人混みで見えなくなった。

「よかったですね、お友達から声かけてもらって」

ルナ先輩の言葉が妙に照れ臭くて、なぜかなにも言えなかった。