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「同着……」

そんなことがあるのか。瀬名アイリーンはひとり厳しい表情を浮かべて、《バーサス》に接続したPCを眺めていた。と、デスクの隅でスマホが震え始める。アイリーンは手に取って、画面をスワイプした。

「瀬名、《バーサス》の《サークル1》、見てただろ」
「教授も見てたんだね」
「当然だろ。実に興味深い。貴重なサンプルだよ」
「そうだな」
「なんだ、面白くなかったのか」
「いや、そうじゃないけどね……」
「じゃあ、何なんだ? 瀬名が怖気づくなんて珍しいな」
「いや、そうじゃないよ。ただ、何だろう。あいつらの、《すーぱーあゆみんミニ四チーム》、この先どうなっていくのかわからないな」
「そうだな。でも、レースはそんなにのんびりやってるわけじゃない。たとえどんだけポテンシャルがあっても、レースで出せなきゃ意味はない」
「うん……」
「まあ、深く考えるな。ビギナーズラックというやつだ。私たちは今まで通りにやっていこう。その中で、お前との決着もつけるからな」
「はいはい、それじゃ」

アイリーンは、スマホの通話を終わらせた。《サークル1》が通常の運用に戻っていく様子が、画面に表示されている。様々な形状、カラーリングのマシンがコースに散っていく。
……なんだろう、この、落ち着かない感じは……
アイリーンはデスクから離れて、ベッドに身体を投げ出した。