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軽い昼食をとって、《すーぱーあゆみんミニ四チーム》はホテルを後にした。電車で10分ほど移動した後、徒歩でまた10分。途中、線路際の細い道に戸惑いながらも、どうにか迷うことなく、目的地にたどりついた。

「《モーギュウドーム》……。あたしたちの、運命が決まる場所。そう、あたしたちの、とびっきりの走りを見せてやろう!」

あゆみが決意を口にしている間に、四人は奏を先頭にして進んでいた。あゆみは慌てて追いかける。
入場ゲート前の広場には、それまでの会場にはない、張りつめた空気がすでに充満している。出場20チームのうち、既に決勝進出が確定したチームはほとんど無く、大半のチームが予選落ちの可能性を抱えている。続々とやってくる少女たちの顔からは、ことごとく表情が消えていた。

「あ、岡田さん!」

ルナは、視界を横切った後ろ姿を追いかけようとする。だが、隣を進んでいた少女の肩にぶつかってしまった。

「ごめんなさい!」

レースには場違いに思える白衣をまとった少女は、長い髪をなびかせながら、ほほ笑む。

「大したことはない。焦るのはわかるが、気を付けた方がいい」
「すみません……」

頭を下げ、顔をあげると、すでにあきらの姿は無かった。

「ルナ先輩、どうしたんですか? 慌てちゃって、らしくないですよ」

たくみは、いつもと変わらず軽い口調。

「あ、ごめんね。さっきの新幹線で、《サイコジェニー》のリーダー、岡田さんと隣になって」
「偶然、いや、これは、必然」
「で、そのリーダーさんと何かあったんですか?」

たまおの言葉をさえぎるようにして、たくみが問いかける。

「うん、ちょっと……。気になることがあって」
「猪俣さん」

先頭を歩いていた奏が振り返る。

「それ、落ち着いたら聞かせてくれる?」

大会が行われる場所が変わっても、
チームごとに割り当てられたピットスペースに入ってしまえば、パーテーションに囲われた、これまでと同じ光景が広がっている。

「『この大会限りのチーム』か……」

奏は腕を組んだ。決定的な弱点や、対抗する方法に直接つながる情報ではない。ただ、だからといって聞き流せるほどの小さな話ではない。

「おそらく、学校に正式な活動として認められているのではないのでしょうね」
「そっか……」

あゆみの脳裏に、数ヶ月前、奏から投げかけられた言葉がよみがえる。
……証明しなさい! あなたがミニ四駆で勝てることを。それができないなら、トゥインクル学園中等部の部活としては認められない!

「いいじゃん、気にしなくて」
「あゆみちゃん……」

さらりと言いのけたあゆみを、ルナは意外そうな瞳で見た。

「コースに出ちゃえば、チェッカーを目指すライバルだもん。余計なことは考えないに限るよ」
「さっすが、あゆみ!」

たくみが軽く飛び跳ねながら言う。

「ルナ先輩が考えていることは、分かります。ただ……」
「ただ?」

たまおが、ルナを見据えた。

「いえ、言わなくてもいいと思います」
「そうね……ごめんね」

ルナは、たまおの肩に軽く手をのせた。緊張が、手の平から伝わってくる。

《レーススタート、30分前です》

ドーム内に反響するアナウンス。あゆみは高い天井を見上げた。

「よし、じゃあ行こう! あたしたちの全力をぶつけるサーキットへ!」