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ミニ四駆選手権 全国決勝レース《スターティンググリッド》

1列目 予選Aブロック1位 トーキョー代表《ガディスピード》
2号車 ライキリ
1号車 エアロマンタレイ

2列目 予選Bブロック1位 ナガノ代表《フロスト・ゼミナール》
27号車 シャドウシャーク (氷室蘭チューン)
28号車 シャドウシャーク

3列目 予選Cブロック1位 ヒョーゴ代表《イル・レオーネ》
5号車 ラウディーブル (万代尚子チューン)
6号車 ラウディーブル

4列目 予選Dブロック1位 ヒロシマ代表《カルパイルマス》
19号車 ナイトハンター
20号車 ナイトハンター

5列目 予選Eブロック1位 ホッカイドー代表《フライング・フレイヤ》
11号車 ジルボルフ (羽根木美香チューン)
12号車 ジルボルフ

6列目 予選Aブロック2位 オーサカ代表《ナニワ・エキスパート》
7号車 スパークルージュ
8号車 スパークルージュ

7列目 予選Bブロック2位 シコクエリア代表《アール・フォーティーン》
14号車 ヘキサゴナイト
15号車 ヘキサゴナイト

8列目 予選Cブロック2位 ミナミキューシュー・オキナワエリア代表《ミヤラビの祈り》
16号車 カッパーファング
17号車 カッパーファング

9列目 予選Dブロック2位 シズオカ代表《ソレスタル・スクェア》
3号車 トライロング
4号車 トライロング

10列目 予選Eブロック2位 カナガワ代表《すーぱーあゆみんミニ四チーム》
23号車 エアロアバンテ
22号車 エアロサンダーショット

午前十時、二列縦隊に体形を整えながら、20台のマシンが最終セクションのストレートに入ってくる。先導していたペースカーのランプはすでに消灯しており、コントロールラインを越した時点からレースが始まることを告げている。最前列のライキリとエアロマンタレイはややペースを落とし、後続の車両をけん制する。
一方、リアルの会場であるアキバドームは、期待と緊張感にあふれる、重苦しい静けさに支配されていた。外野を横断するように設置された巨大スクリーンには、文字通り密集しながらストレートを進むマシンの群れが映し出されている。
隊列から離れたペースカーが、ピットロードに退避する。ライキリの前をふさぐものは何もない。一呼吸おいてから、黒い車体が震えるように加速を始める。タイミングは《ガディスピード》内で取り決められていたのか、エアロマンタレイも競り合うように鋭いダッシュを見せる。
後続の反応はわずかに遅れた。最終コーナーからホームストレート。コントロールライン上でレースの開始を告げる旗が振られ、二十四時間におよぶ戦いが幕を開けた。エアロマンタレイはライキリの背後につき、一台のマシンと錯覚するようなスムーズさで一コーナーへ飛び込んでいく。二列目のシャドウシャーク二台、三列目のラウディーブル二台と、大きなクラッシュも無くレースは幕を開けた。

「涼川さん、いよいよね。慌てずに、じっくり、行きましょう」

奏が無線で声をかける。しかし、あゆみの答えは無かった。

最後列、イン側のグリッドからスタートしたエアロアバンテが先行し、エアロサンダーショットは最後尾となった。中団グループでは細かな接触が起きているようで、時折ランオフエリアの砂利が巻き上げられ、砂煙が垂直に立ち上がる。その拡がりを避けるように、そしてマシンに負担をかけないように、《すーぱーあゆみんミニ四チーム》の二台は隊列を追いかける。
整備されたグランプリコースから北コースへ。路面コンディションが急激に変わるため、マシンの挙動は大きく変化する。インカムを通じたマシンへの呼びかけ、あるいは前後のマシンとのギャップを考えた作戦の調整が、序盤の戦いにおいては重要となる。
《フロスト・ゼミナール》のシャドウシャーク28号車が、鋭角のコーナーでタイヤを滑らせる。まだ温まり切っていないタイヤで、ペースアップを指示されたためであった。その隙を突いて、万代選手が指示する《イル・レオーネ》ラウディーブル5号車が前に出る。オープニングラップの順位変動はその程度で、それぞれに感触を確かめ合うような静かな幕開けとなった。
しかし先頭を行く《ガディスピード》のライキリとエアロマンタレイは、ハイペースを維持したまま二周目へと入っていく。ハイパーカーのスタイリングをまとったライキリが安定したコーナリングを見せれば、オープンホイールのエアロマンタレイはストレート区間で最高速度を伸ばしてくる。三番手のシャドウシャーク27号車、氷室選手は無理に追うことなく、ゆったりと距離をこなしていく。一方で四番手の万代選手は、ラウディーブルを先行させたいのか、コーナー入口でのブレーキングで急速に差を詰めてくる。

「おい、蘭ち! つっかえちゃってるって!」
「なら、勝手に抜いていけばいい」
「簡単に言ってくれるよなぁ」

事実、シャドウシャークのペースは遅くはない。コース特性を研究して施したハイダウンフォースのセッティングが機能し、目立った動きは見せていないものの、要所では隙のない走りを見せている。

「でも、そうさせてもらうよ!」

コース終盤の直線区間で、万代選手のラウディーブルはシャドウシャークの背後につく。そしてホームストレートで並走、一コーナーでオーバーテイクを成功させた。

「まったく、そんなペースで最後まで走り切れるとは思えんがな……」

氷室選手は抜き返すアクションはとらず、それまでのペースと変わらない走りをつづける。まだ、最初の10分が経過しただけにすぎなかった。