SECTOR-3:AYUMI-1

いよいよスタート!
何がおこってもおかしくないのがレースだけど、さすがに驚く!

グランプリで4年連続の年間チャンピオンになったセブルバ・ベットー選手は、鈴鹿サーキットを「神がつくったサーキット」って呼んでる。

左右に振れるコーナーはひとつひとつが難所だし、ヘアピンは安定性と加速力が必要だ。

一方で折り返しのコーナー《スプーン》からは一気に直線ばっかりのコースになる。高速の130R、そしてシケインはミニ四駆で言うならレーンチェンジャー。1周走らせるだけでも気持ちがすり減りそうなのに、これを8時間も続けるって言うんだから《選手権》を仕切ってるひとはどうかしてるよ。

《スタート時刻です》

隊列はいまバックストレートに入った。20台のマシンは2列にならんでコースを進んでいく。

「ペースカーはこの周でピットインだ」

たくみの声。

「全車、トラブルなし」

たまおの声。

「いけますよ」

そして、ルナの声。

本当ならここまでこれたことに感謝したいんだけど、今はそれどころじゃない。

スタートのとき。グランプリやミニ四駆のように、いったん止まってからのスタートじゃなくて、隊列をつくって動きながらのスタートは「間合い」が大切だ。
先頭のフレイムアスチュートがつくるペースに合わせてついていかなくちゃならない。早ければペナルティをもらうし、遅れれば後ろに抜かれてしまう。

「ペースカーがピットに入った」

会長の声。

「よぉし……」

赤いリヤウイングが、エアロサンダーショットの間近に迫る。ペースをおとし、隊列を引き連れてからスタートするつもりみたいだ。
と、ウイングがわずかに左右に震えた。アスチュートのタイヤ、一瞬スリップして路面に赤いマークがつく。

「ペースアップ!」
《Copy.》

2台は同時に、完全に同時にスタートを切った! インコースはフレイムアスチュート、あたしたちはアウト。
ホームストレート、コース上のライトはグリーン。

《いま、スタートです!》

ついに始まった……! っていう、あたしの意識は一瞬で吹き飛んだ。

「あゆみ、外!」
「えっ、なに!?」

スクリーンに目をやると、エアロサンダーショットの背後から黒い影が飛び出して、大外にもちだしてならびかけていた。

「ナイトレージ!」
「志乃ぶちゃん!?」

予選6番手、完全に意識してなかった場所から飛び出し、あたしたちを1コーナーまでに追い抜いて、フレイムアスチュートをインのきついラインに押し込み、短い直線で強力に加速すると、先頭に立ってしまった……!

「ナイトレージ……。」

頭のなかは早くも真っ白だよ……。