第10話

SECTOR-6:HIDEMI-1

まだレースは動かない。先に動いた方が敗北の道を進むことになる。先にそっちに近づいたのは……。ピットウォールでモニターを見てる私に、後輩が紙コップでアイスティーをもってきた。「センパイ、よろしければ」「ありがと。悪いわね」「いえ……。その、2…

SECTOR-5:TAMAO-1

ピットインがアタイらの仕事。普通にこなして当たり前。落ち着いて、確実にやればいい。「2周あとにピットインするよ!」あゆみの声がインカムに響いた。スタートから20分が経とうとしている。ナイトレージのリードは相変わらず。ただ、エンプレスやアタイ…

SECTOR-4:TAKUMI-1

ナイトレージJr.の奇襲、それにはそれなりの計算がある……ってたま姉が言ってる。「どういうつもり!?」猪俣センパイが思わず席をたつ。ボクもつられて立ち上がった。最初のチェックポイント、右に左にコーナーが続く区間を抜けたところで、先頭はナイト…

SECTOR-3:AYUMI-1

いよいよスタート!何がおこってもおかしくないのがレースだけど、さすがに驚く!グランプリで4年連続の年間チャンピオンになったセブルバ・ベットー選手は、鈴鹿サーキットを「神がつくったサーキット」って呼んでる。左右に振れるコーナーはひとつひとつが…

SECTOR-2:KANADE-1

秀美のことももちろん気になりますけど、今はキャプテンで後輩の面倒を見ないとね。私たちはチームだから。《スタート5分前です》ピットウォールの席に座り、《バーサス》のバイザーをつける。がらんとした展示場は一転して、サーキットの風景へと変わる。「…

SECTOR-1:RUNA-1

いよいよ耐久レースがスタートします!さっき見せられたニューマシン、あゆみちゃんってすごい!《スタート10分前です》アナウンスに合わせて、甲高いサイレンが鳴りました。ピットの外のざわめきも一段と大きくなってきたようです。予選を残念ながら通過で…