第5話(#17) 月と太陽と

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ライトノベル

  • 1

    日曜日のナゴヤ駅。一台のバスがゆっくりとターミナルに入ってくる。未明にヨコハマを出発し、およそ六時間の行程を終えてナゴヤにたどり着いたバスは、長旅の疲れを車体にまとわりつかせているようだった。降りてくる乗客は、みな若者たちばかり。新幹線を使…

  • 2

    チャイムの音に続いてエレベーターの扉が開くと、真っ先にあゆみが飛び出した。「もう、早く行こう! あたし、お腹すいちゃったよ」たくみとたまおが、あゆみを追いかけてエレベーターを降りる。「そう慌てなくても大丈夫だろ?」「朝食は逃げない……多分」…

  • 3

    あゆみ達がたどりついた喫茶店は、ナゴヤに一号店がある全国チェーンの系列だけあって、店内は早朝にも関わらず観光客や若者で混みあっている。店員に人数を聞かれ、あゆみは「5人」と答えた。店員は店内を見回してから、少々お待ちください、と言い残して駆…

  • 4

    「じゃあ、私はあっちだから」「はーい、しーちゃん気を付けてね」「だから、その名前で呼ぶなって!」あゆみ達は地下街から、ナゴヤ駅前に戻ってきていた。日も高くなり、人通りもだいぶ増えている。ひとしきり立ち話をしてから、志乃ぶは目的地のライブハウ…

  • 5

    志乃ぶはルナの手首をつかんだまま、駅から遠ざかる方向へ走り続けた。途中、道行く人にぶつかりそうになりながら、さらに段差や点字ブロックにつまづきそうになりながらも、志乃ぶは走り続けた。「ちょっと、もう、この辺でいいんじゃない?」「あ……そう……

  • 6

    碁盤の目のように縦横が直角に交わる路地を駅に向かうと、新幹線の高架が見えてくる。その下をくぐる細い道を抜けると、斜めに傾いたような建物が見えてきた。「うわっ、ルナ、いいの? もうすぐそこまで来ちゃったけど」「え? だって会長もあゆみちゃんも…

  • 7

    三時間に迫る公演は、あゆみ達にとっては正に未知の体験だった。巨大なスピーカーから放たれる音の圧力にもまれて、全身が筋肉痛にも似た疲労感につつまれていた。その中で、あらゆる楽器に負けることなく中心で歌声をあげつづけた女性、《チッカ・デル・ソル…

  • 8

    楽屋を明け渡したものの、中で何が起こっているのかを、全員が知りたがっていた。少女たちはドアの周りに群がり、漏れてくる声に神経を集中させていた。志乃ぶは、サリーヌとルナが語る断片的な言葉と、今まで経験してきたことを、脳内でつなぎ合わせる。猪俣…

 

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